事故2日後(4月27日)

お葬式当日


朝早く4時頃から我が家のわんこがいつになく
「わんわん、わんわん」とうるさく起こされる

じーは事故の日以来、いとこの元に行ったきり

5時過ぎに起きていくと、ばーさまが
「鹿除けネットに犬が捕まっている」と

見にいくと、我が家のわんこよりふた周り小さな雑種と思われるわんこが
ネットにひっかかり、ふてたようすでくるまっていた

あぁこれでうちのわんこが吼えていたのかー

今日はいとこのお葬式

お葬式までに愛媛と名古屋からお葬式に参列する親戚を
神戸まで迎えに行かなければならない

ネットにぐるぐる巻きになったわんこをほっておこう
今日は忙しいから

と思ったが、
くるまった姿のまま、切なげに私を見上げ「く〜〜んん」
と鳴くわんこをほっておけなくなり
ネットをハサミでちょんぎって自由にしてやった

首輪とリードが付いている
でも近所では見たことない犬だった

自由になったわんこに
「気をつけて帰るんやで」
と声を掛け、坂道を降りていくわんこをしばし見送った

が、坂道の途中でわんこは振り返り、しばし考え
こちらの方に小走りに帰ってきた

「帰る家分からないん?」
と聞くと、わんこは私の前でおすわりをした

「今日はここの家の人、忙しいねん、
悪いけど自力で帰ってな」

と話をして家に入ろうとしたら、
先日から下の道路が工事中で、
今日の工事が始まったらしく
大型トラックが車体を大きく揺らしながら走り去っていった

あ、このままほおっておくとこのわんこ
おのトラックに轢かれるかも知れへん

リードを持つと、素直にわんこはついてくる
車に乗せ交番に届けに行く

お巡りさん
「一週間はこちらで預かることができます。
その間に飼い主が分からなかったら保健所で・・・」
と可哀想な真実を告げられ、もし、飼い主が現れなかったらうちに連絡がもらえるようお願いした。
飼い主が現れなかったら、我が家で飼おう、と決めた

もう不慮の事故でたとえ見知らぬわんこでも
死んでしまうのはたまらないと思った


午前8時
ばーさまとおいちゃんは一足先にいとこの家に
少し遅れて息子・娘と三人親戚を迎えに神戸に出発

予想外に道が混んでなかなか神戸に行き着かない
お葬式には間に合うが、気持ちがあせる

約束した時間の30分遅れで親戚と合流、
久しぶりに見るいとこは(父の一番上の姉の長女)
頭が真っ白になっていた
積もる話、近況など話ながら西宮の斎場に向かった


お葬式
どうしても、お葬式の時間が思い出せない・・・
到着したらみんなお弁当を食べていたので午後からだったのだと思う

会館の入り口に数社
川沿いにある会館であったため
川向こうには何社ものマスコミが
こちらに向けてカメラを回しTV中継されているようだった

平日なのにいとこの甥っ子・姪っ子も多数参列していた

「かあさんはまだ自分がどうなったか、どこにいるのか
分からないと思う
かあさん、一緒に家に帰ろうな

棺おけに釘が打たれようとした時
いとこの息子さんがそっと最後にいとこに言った


川向こうに居た筈のマスコミなのに、後でニュースを見ると
中で執り行われたお葬式のようすが
言葉までTVにしっかり流れあたかもすぐ側にいたような
画像が流れていた
今のマスコミの凄さも同時に後で知らされた

焼き場は、有馬温泉街を通り抜けた先にあった
遅咲きの八重の桜の花吹雪が舞う
お天気のいい日だった

有馬の細いくねった山道
バスの隣にすわっていたいとこが
「何度かせっちゃん(亡くなったいとこ)の家に行ったとき
ここで泊まったんよ」

あ、いとこはこの温泉が好きだったのか、と
「最後にここ通れて喜んでるわきっと」

お天気のよい、桜吹雪舞う路を
バスはゆっくりゆっくり通り過ぎていった

焼き場は小さな所だった

小さな焼き場に溢れるほどの親族がいた


焼かれたいとこの骨がどんな形状をしていたのか
全く覚えていない
思い出せない

焼き場へ行くまでの有馬の路
八重の桜吹雪の溢れた坂道

斎場に戻って骨になるのを待つ間
会館の前に葉の間から咲いていた
遅れ桜

鮮明にこれらは覚えているのに

これから後のこの日の事
いくら考えても
思い出せない

どうやって(車でだろうが)誰を乗せて帰ったのか

次の日私はどのように会社の人に話しをしたのか
これから暫くの間に起こった事を
全く思いだせないでいる




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