後続の電車に乗っていた私

※このページはフィクションです

後続の電車に乗っていた、JR福知山線に乗って毎日通勤・通学している
友人、知人、友人のご主人、子供の友人等の話を聞いたものを
一人のという架空の人物を設定して総合して作っています

限りなく複数口のノンフィクションではありますが
、という特定した実在の人物がいるわけではありませんし
心情的なところには私見が入っています※





私は19歳、高校をこの春卒業し、今大阪の専門学校に通っている

4月25日、、、駅まで約4km自転車を走らせ、JRの電車に1時間揺られて通う
大阪までの通学も、やっと慣れてきた。

昨夜は今日提出のレポート作成に時間がかかったので
今朝はとても眠い。

1時限の授業が無かったので、今日は少し遅い目の電車に乗った。

通勤ラッシュが過ぎた後なので、三田駅まではゆったりとした車内
最初は文庫本を読んでいたけれどレポート作成の疲れで
いつしかうつらうつらしていた。

・・・・・どれぐらい眠っていたのだろう・・・

いつもと違うニュアンスの車内放送で目が覚めた
「先の電車が止まってしまっておりまして、大変申し訳ありませんが
 次の停車駅、尼崎駅まで、、、駅は数百メートル先になりますが
 これから電車から降りて、歩いて尼崎の駅まで行っていただきたいと
 思います。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」

そんな車内アナウンスが流れた。

覚醒しきれない頭でぼんやりとアナウンスを聞き
周りの人達が、何だって〜〜!と言いながら車外に出るのを見て
夢じゃないよなー、と思いながら私も車外に出た。

駅ではないので、線路に降りるのには飛び降りる形で
砂利の上にかろうじて飛び降りた。

飛び降りた外は初夏のような光りを受け、想像以上に暑かった。

結構な人数の人達が列をなすでもなく、思い思いに線路ずたいに
南に向かって歩いていた。
その集団の中に加わりながら、少しずつ頭がはっきりとしてきていた。

足をとられないように、と気をつけながら前を見ると
いつも悲鳴のようなうなりをあげて通過する急カーブの所に
電車が止まっているのが見えた。

あぁ、あの電車が止まっているから通れないのか、
何で動かなくなったのだろう・・・
そうのんびり思いながら電車にゆっくりと近づいていった。

ふいに、「あぁ〜〜!」とか「助けて〜〜」とか
「大丈夫ですか!」「こっちを早く!!」
という叫び声やうめき声があちこちから聞こえてきた

え!何!なんなの??

電車に近づいていくにつれ、その言葉ははっきり大きくなってくる

そして・・・
その電車はマンションの壁にぶち当たり、前に行くほど車両の形状を
とどめない形でつぶれて、その中に残る人達を助けようと
必死で動く人達が電車の周りに溢れていた。

と、すぐ側を血まみれの人を抱きかかえて
自分もその人の血で真っ赤なになった服で走っていく男性が目に入った

!!!
ふいに足に力が入らなくなり、私はその場に倒れ込んだ。

・・・どれぐらい経ったのだろう
気が付くと、私は見知らぬ背広を来た男の人に支えられ
引きずられるようにして歩いていた。

その男性が
「電車事故みたいですね、大丈夫ですか?尼崎の駅まで一緒に
行きましょう」
そういって抱えるようにして私を駅まで連れていってくれた。

尼崎駅に着き、その男性とは行き先が違った
「一人で大丈夫?」と聞かれたので、私は何とか言葉で
お礼を言おうと思ったのだけれどどうしても口が開かず
大きく、こくり、と頷いた。

一人になった私は、溢れかえる尼崎の駅のホームに座り込み
震える手で携帯をだし、事故にあった友達は無いか
かたっぱしからメールをした。
最後の一人が返信して、全員の安否を確認するまで
私は座り込んだまま、動けなかった。

・・・この日、どうやって学校に行き、授業は間に合ったのか、
どんな一日だったのか、私は全く思い出せない。

この日からJR宝塚線は不通になり、
私は天王寺の親戚の家から通学をすることになった

・・・・あの日、あの電車を見て倒れてしまった私・・・
「助けて〜〜」「早く!」
そんな言葉が行き交う中を私はただふらふらと通り過ぎた

もし、私がもっと強く、その場で適切な判断が出来たなら
たとえ一人の人の命でも救えたのではないか?
なぜ私はあの時倒れこんでしまったのだろう

もし、私が倒れなければ、私を抱きかかえて
尼崎の駅まで連れて行ってくれたあの男性も
電車の中の人を一人でも助けられたのではないだろうか?


夏休みが始まって、私は家族の車ではじめて我が家に帰った。
休みが終わり、始めて電車に乗った時
私はいいようの無い恐怖と自責の念に囚われ
そしてそれは今も時々自分の中で、堂々巡りの後悔となって
大きくのしかかってくる。



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